Ayu in Taiwan

台湾で生活しながら、日々の暮らし、旅行、そして中国語や心のことなど綴ってます。

台湾映画『流麻溝十五號』

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『流麻溝十五號』という映画を見てきました。

久々の映画館での映画鑑賞です。

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白色テロの時代、政治犯や思想犯という罪をでっち上げられ、思想改造と称して緑島(火燒島)に送られた人々を描いた作品です。題名の流麻溝十五號というのは、ここに送られた人たちの戸籍所在地だそうです。

こちらが映画の簡単な紹介で、宣伝の映像もあります。

japan.focustaiwan.tw

宣伝の映像には怖いシーンも多かったので、耐えられるか心配でした。途中で耐えられなくなったら、出てきちゃえばいいかと思って行きました。

結果、最後まで引き込まれて見終えることができました。見ている間は、怖さというより、理不尽さや不条理さを強く感じました。「この人たちはなぜこんな目に合わないといけないの?」という。

冤罪、というよりも罪そのものも存在しないのに、人生を狂わされて、もう二度と元の自分には戻れないという現実。もし私なら、どうして自分がこんな目に遭わなくてはいけないのかと考え続けてしまうでしょう。自分は何も間違っていないのに、どうしてこんなことになってしまったのかという恨みばかりを募らせて、諦めることができない気がします。

主に3人の女性を中心にお話が進んでいくんですが、私は最も年上の嚴桑(yán sāng)に一番感情移入して見ていました。

嚴桑の桑は日本語で名前の後に付ける「さん」のことで、発音も大体同じです。彼女は苗字が嚴(イエン)なので、みんなからイエンさん、あるいはイエン姉さんと呼ばれています。当時の台湾(1950年代)は、日本が統治していた時代に日本語で教育を受けていて、日本語と福建語または客家語など家庭で使う中国の方言はしゃべれるけど、現在の台湾華語のような中国語は苦手という本省人(戦前から台湾に住んでいる漢民族の人たち)もたくさんいました。なので、劇中でもイエンさんと杏子(きょうこ)はよく日本語で話しています(そして日本語の分からない国民党の軍人に怒られます)。たぶん杏子みたいに日本人のような名前を付ける人もいたのかな?(この辺、まだ勉強不足でよくわかりません)

とにかく私は途中からイエンさんみたいに生きられるかな…とても無理だな、と考えていました。無理だけど、人間ってあんなにも過酷なことも運命として飲み込んで、生きていくしかないんだなとも思いました。処刑前に撮られた実際の人々の写真が映し出されるシーンがあるんですが、多くの人が微笑んでいました。

もしかしたらあまりにも救いがないと辛すぎると思ったからか、最後に少し幻想的なシーンがあって、たしかに少し救われました。

実は、少し前に台東に旅行した時、泊まったペンションの近くの波止場から、この緑島ツアーのフェリーがたくさん出ていたんですよね。行っておけばよかったなぁ。