Ayu in Taiwan

台湾で生活しながら、日々の暮らし、旅行、そして中国語や心のことなど綴ってます。

『透明な膜を隔てながら』読了

李琴峰さんのエッセー集『透明な膜を隔てながら』

https://amzn.asia/d/6ZpBO0q

を読んだ。

だいぶ時間がかかってしまった。
電子書籍で購入しているのであまり実感がないけど、かなりボリュームがある本なんじゃないかと思う。

最初にサンプルを読んだらとてもおもしろかったので、これは全部読みたいと思って購入した。
最初こそ共感できる部分がすごく多かったけど、途中からは自分とまったく違う人生を歩んできた人だったので、なかなかサクサク読み進めることができなかった。
文章は読みやすくて、内容も興味深かったんだけど。

でも結果、自分では普段考えないようなことをいろいろ考えるきっかけになったので、時間はかかったけど読んでよかった。
この方の小説も読んでみたい。

実はこのエッセーを途中まで読んだときは、あまりに赤裸々にこの作家の考えを見せつけられた気がして、この人の小説はもういいかなと思ったんだけど、エッセーを最後まで読んだら、こういう思いをどんなふうに小説にしているんだろうと気になり始めた。

李琴峰さんは台湾出身で、大人になってから日本に来て日本語という第二言語で小説を書いている作家だ。母語ではない言葉で小説を書いて、しかも芥川賞を取るほどの作品を書いている。
最初にこの作家を知ったのは、その芥川賞の受賞のニュースだった。
日本語と台湾中国語のバイリンガルで、才能もあってまだ若い前途有望な女性作家という印象で、すごくキラキラした人に見えた。
すごい!世の中にはこんなに自分とかけ離れた人もいるよね、という印象だったけど、エッセーを読んだら、全く違う意味で私とはかけ離れた人だった。
なんとなく台湾や日本の闇の部分も感じた。受賞ニュースでの聡明で明るい未来に向かって輝いている人という印象から、この人は作家になるべくしてなった人なんだなという印象に変わった。
もちろんすごく才能があって聡明で前途有望であることは変わらないと思うけど。

第二言語で作品を書く人はどんなふうに考えているんだろうという、主に言葉への興味から手に取ったエッセーだったけど、李琴峰という一人の作家を知るきっかけになり、作家としての彼女に興味が湧いた。